別の先生のレッスンを受けるのに、許可は必要か
今回は音楽のレッスンに関して、度々耳にする話__並行してレッスンを受ける場合、元々メインで習っていた先生の許可は必要かというテーマで書く。
個人的には不要だと思うが、これが多数派意見かどうかはわからない。
そもそも専属でレッスンを提供してもらうという契約はしていないだろうし、別の先生を試してみるのは、生徒の自由だ。これは、歯医者やヘアサロンなどを勝手に変えるのと同じように捉えて、問題ないように思う。消費者はサービスを選ぶ権利がある。
専門的になればなるほど、多くの先生についた方が腕は上がるし、別の観点から客観的意見が聞けるのは、大変なメリットだと思う。一人の先生だけだと、どうしてもその先生の癖のようなものを引き継いでしまうし、当然ながら、作曲家や演奏スタイルの得意不得意も存在する。だから、ある程度のレベルに達したら、目標が高いほど、積極的に様々な先生にお願いしてみる方が幅が広がると思う。
ただ、無断で別の先生のレッスンを受け、元々レッスンを受けていた先生から嫌味を言われたり、関係が悪化したりという話は時々聞く。やはり一度でもレッスンを受ければ、演奏は変わる。その先生の実力が優れているほど、びっくりするほど変わってしまうだろう。同じ曲を別の先生に見てもらい、その後元の先生に再び聴いてもらった場合、それを隠すのは不可能だと思っておいた方が良い。
同じ曲を見てもらうのであれば、事前に一言話しておく方が、後々気まずい会話を避けられるかもしれない。その際、別の先生のレッスンを受けることを快く思わないような先生は、残念ながら継続しない方が良いように思う。プロフェッショナルな先生とは、自分で全てを完璧に教えられると考えている先生ではなく、自分の得意不得意を知り尽くし、場合によっては生徒のためにより良い先生を紹介し、日々勉強を続ける先生なのだ。
これは例えるならば、かかりつけ医の範疇を超える症状がある場合、専門医や総合病院を紹介してくれたりするようなものだ。自分に出来ることと出来ないことを、的確に判断できるのが、その職業のプロだと思う。
ただし、まだ基礎の基礎を学んでいるうちから多くの先生につくと、一貫性に欠け、逆に習得に時間がかかってしまうので、お勧めしない。一通り自分で演奏がコントロール出来るレベルに達してからだ。また、先生と非常に相性が良く、趣味として楽しんでいるような場合も、わざわざ別の先生に、とは考えないだろう。
並行してレッスンを受けるようになるのは、生徒自身が、その先生のレッスンだけでは物足りないと感じ始めたときだ。例えば、ドイツ作品は素晴らしいけれどもフランス作品は苦手らしいとか、構築していこうとするレパートリーが重ならないとか、どうしても解釈の違いに納得出来なくなったとか、体格が違い過ぎるためにアドバイスが適切でない気がするとか、音楽教育者だけでなく現役の演奏者のアドバイスが欲しいとか、演奏に対する感情面でのすれ違いとか、マンネリを感じるとか、千差万別だ。
そういったときは、別の先生を試してみる良い機会だ。全然違ったアプローチに驚くかもしれないが、音楽の捉え方が広がるのは確実だ。