上達の構造

2026年03月20日

楽器の上達とは、具体的に何を言うのだろう。今回はこのテーマで書く。おそらくスポーツなど、身体技術を習得する分野において、似通った部分が多いのではないかと思う。

自分の専門楽器がピアノだから、ピアノを例に挙げているが、ほぼ全ての楽器に同様なことが当てはまるはずだ。

まず上達と言って思い浮かべることは、何だろう。ミスタッチが少ない、つまり音を外さないことなのか。テクニック的に難しい楽曲を演奏出来ることなのか。どんなパッセージに出会っても、指が速く的確に動くことなのか。

これらは上達と共に出来るようになることではあるけれども、それらは「現象」であって、上達の本質ではないと考える。では何が上達かと問われたら、迷わずこの2点を挙げる。

1、思い通りにコントロール出来ること。
2、再現性があること。

この二つに集約されるように思う。

1、思い通りにコントロール出来る
これは、単にミスタッチ無く弾けるとか、速く指が動くということではない。例えば、音色を自分で選べる。音を出すタイミングを調整出来る。強弱やテンポを意図的に変えられる。その場で修正、微調整出来る。こういったことだ。

さらに言えば、自立している、とも表現出来る。これは、誰かに言われた通り弾くのではなく、自分で判断し、自分で気づき、自分で修正の仕方が分かる、ということだ。頭の中に完成形があり、そこに近づける作業が1人で行えるということ。

思い通りに打鍵が出来ない、テンポがコントロール出来ない、音質が納得いかない、こういったときに、原因を瞬時に分析し、それを反映して無駄のない動きで修正出来る。この「修正の速さ」と「無駄のなさ」こそが自在に演奏を操る必須要素であり、コントロール力の正体ではないかと思う。

2、再現性がある
一度上手く弾けた、たまたま弾けた、というのは残念ながら上達とは少し違う。時間や環境が変わっても(ピアノの場合は楽器が異なっても)いつでも同じ質で再現出来ること。これが上達のもうひとつの軸だと思う。

そのためには音楽の構造を理解していることが必要になる。感覚だけに頼らず楽曲構造を把握していないと、どうしても再現性が担保出来ない。また再現可能な身体の使い方を持っていることも必要だ。具体的には、無駄のない運指や、自分の骨格に合った手や腕の使い方だ。

ここで、読譜力は重要な役割を持つ。確かに楽譜が読めなくとも弾ける人はいるし、それは可能でもある。しかし、再現性という観点から考えると、構造を把握する、和声進行を理解する、フレーズ全体の設計図を持つ、といった、楽譜を読み解くことで得られる能力が、大きな助けになる。先読みすることは、無駄のない動きにも繋がる。

ミスをしない=上達ではない。
もちろんミスのない演奏は素晴らしい。それを可能にするテクニックの習得も大事である。しかし「ミスをしない」というのは、上達の結果であって、定義ではないだろう。

例えば、難曲を弾けるが毎回出来が違ったり、速く弾けるがテンポコントロールは出来なかったり、暗譜しているがどこがどうなっているのか理解していなかったとしたら、これを上達とは呼びにくい。本当の上達とは、自分で設定できる、自分で修正出来る、何度でも同じように音を出せる、こういった状態だと思うのだ。

つまり、上達とは自由度が増すことだ。速くも弾けるしゆっくりでも弾ける、テンポを自由に伸び縮みさせられる、強くも弾けるし弱くも弾ける、どんな音形にどんな強弱でも付けられる、メロディを歌わせることも硬質な音を出すことも出来る、同じ楽器から異なる音色を引き出せる。そしてこれらを、偶然ではなく、意図して出来る。楽器という道具を自在に操れる。その割合が増えていく。これを上達というのではないか。

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